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まるで"白い巨塔"? 大学病院の「無給医」は北海道にも それでも働くワケ

2019年7月6日10:00
 大学病院で実際に診察や治療を行っていながら、給料が支払われていない医師・歯科医師、いわゆる「無給医」が確認された問題。北大病院も全国で2番目に無給医が多いことがわかりました。この問題、お医者さんだけではなく、診察や治療を受ける私たちに直接降りかかってくる問題なんです。


◆"無給医"の実状は…

 無給医とは大学病院などで実際に診察や治療を行っているのに、給料が支払われていない医師や歯科医師のことです。文部科学省が6月発表した調査結果によると、全国50の大学病院に2191人もいました。

 無給医は北海道内にもいました。全国で2番目に多かったのが北海道大学病院で146人。また、北海道医療大学病院(全国で30位)でも22人いました。

 根本匠厚生労働相は7月2日の記者会見で「賃金不払いは労働基準法違反であり、速やかに改善が図られる必要がある」と述べました。

 北大病院では無給医のうち84人には給料をさかのぼって支払い、62人には今後支払うとしています。また道医療大病院でも22人に今後は支払うとしました。


◆「無給医」どんな弊害が?

 働いているのに給料が支払われていない無給医。様々な弊害が出ています。無給医の多くは日中はフルタイムで大学病院で働いています。給料がもらえないと生活できませんから、夜間や休みの日にほかの病院でアルバイトをせざるを得ません。徹夜が続くことや、休日が全くないというケースもあるということなんです。

 その結果、体や心を壊したり、過労死の危険性も。また、診察や治療に支障も出てきます。東京都内の30代の医師は勤務が続き手術中に居眠りをしてしまったというケースも。

 医師の労働問題に詳しい、全国医師ユニオンの植山直人代表によりますと、実例として、月80時間の過労死ラインの2倍の残業をこなしても労働契約を結んでもらえない医師もいるということなんです。

 また、適切な労務管理が行われず、診察や治療時に扱う放射線の被ばく線量が管理されておらず、どれくらい被ばくしているかわからないケースもあるというんです。


◆背景には"白い巨塔"

 なぜ、このようなことがまかり通っているのか?背景には"白い巨塔"の現実がありそうです。

 大学病院の医局は、教授をトップとしたピラミッド型の組織になっています。大学病院のポストや、関連病院への医師派遣に強い影響力を持つと言われています。そして、無給医として働いている医師の多くがこのピラミッドの最底辺に位置する研修医や大学院生なんです。

 なぜ、無給でも働くのでしょうか。高度な医療の経験を積みたいとか、専門性を高めたい、あるいは博士号を取得したいといった目的のため甘んじているケースが多いんです。いわば、向上心のある立場の弱い人に事実上、無給を押し付けていることになります。

 そして、不平や不満があっても"絶対権力者"には言いにくいという背景もありそうです。


◆"大学病院の闇"をなくすには

 無給医だけではありません。大学病院で働く医師の勤務の実態です。全国医師ユニオンの調査によりますと、民間の病院では医師の勤務時間の管理をタイムカードで管理しているのが49.5%、自己申告が31.1%、管理していないのが16.1%。

 これに対して、大学病院ではタイムカードはわずか5.5%、自己申告が63.3%、管理なしが29.1%に上っています。

 つまり、無給医の存在やこのような甘い労務管理の背景には労働環境が悪くても人材が集まる状況にあぐらをかいていると言わざるを得ません。

 全国医師ユニオンの植山代表は、「今回の文部科学省の調査で、無給医の実態が全て明らかになったとは思えない。長く続いてきた大学病院の慣習に労働基準監督署は徹底的にメスを入れてほしい」と指摘しています。

 さらに、植山さんは「今回明らかになった無給医が2000人以上という数字は氷山の一角で、まだまだ多い」と推測しています。大学病院の構造を背景とした無給医の問題の根はとても深いといえそうです。

 (7月3日放送 UHB『みんテレ』内「ほぼ日刊八木タイムス」より)

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