ヒグマは津軽海峡を泳いで渡れるのか? 過去には離島まで20キロ近く泳ぎ切った例も…"驚異の身体能力"で本州上陸の可能性は
クマの生態に詳しい北海道野生動物研究所所長の門﨑允昭さんによると、利尻島と北海道間の最短距離は19キロ。
利尻島に現れたクマは、交尾のためメスを探して海を渡ったとみられています。
メスがいなかったせいか、クマは最後にはまた泳いで島から去っていったということです。
この利尻島にヒグマが現れたのはこの時だけではありません。
1912年にも、体長2.4メートル、体重300キロの巨大なオスグマが島に現れました。
しかし上陸寸前に漁師たちにみつかり、斧で撃退されるなどして、上陸は阻止されました。
ヒグマは津軽海峡を泳ぎ切ることができるのか
このように20キロ近くの海を軽々と泳いで渡れる泳力を持つヒグマ。
津軽海峡も制覇してしまう恐れはないのでしょうか。
実は最短距離だけみると、実は利尻島と本州までの距離は、そう違いはありません。
北海道との最短距離は利尻島が約20キロ。
ヒグマの生態に詳しい北海道大学大学院獣医学研究院 野生動物学教室の坪田敏男教授は、距離だけで考えると津軽海峡を渡って本州に行くことは可能かもしれないとした上で、「潮の流れや風の向き」なども関係するので、そう簡単なことではないと指摘します。
実際、ヒグマが津軽海峡を渡って本州にたどり着いたという話は聞いたことがありません。
かつて本州にもヒグマはいた
坪田教授はさらに、ヒグマの生息を本州と北海道で隔てているのは、単に距離的な問題だけではないと指摘します。
坪田教授によると、実は、進化の過程で海面が低かった時代にヒグマは一度本州に渡来していて、本州でヒグマの化石も見つかっているということです。
しかし本州にいたヒグマはすべて絶滅してしまいました。
環境に適応していたツキノワグマとの生存競争に敗れたのかもしれません。