バレーボール王国・北海道江別市の秘密 "世界のリベロ" 山本智大選手の父が築いた「美しいプレー」の伝統 羽ばたく未来の選手たち
■思いは長男へ…「汚い形では上手になれない」
そして2007年、忠文さんは転勤で江別中央中を去った。
それから時が経ち2023年。江別中央中の女子バレー部監督に忠文さんの長男、貴大さん(32)が就任した。
貴大さんはパリ五輪代表だった山本智大選手の2歳年上の兄だ。
弟と同じく父親の指導を受け、江別中央中ではセッターとして全国3位になった。
「父が指導者をしていて試合を見に行っていたので、自然にバレーが好きになりました」
中学で実績を残した貴大さんは、もちろん高校でもバレーの道を歩む。
選んだのは公立の札幌藻岩高校。(大泉洋さんの出身校でもある)
全国3位のセッターだった貴大さん、私立の強豪からも注目される存在だったが…
「教員になってバレーの指導者になりたかったので、公立に行こうというのが1つ。そしてバレー部がちゃんとある高校。いい先生がおられたので、そこで教えてもらいたいと思って」
藻岩高校でもセッターとして活躍し、23年ぶりのインターハイ出場を果たした。
そして、自らの夢でもある教師、バレーボールの指導者になった。
「自分が父に教えられたものを教えています。“汚い形”で上手な人はいないと思うんですよね。上手いなら上手いなりの身のこなしがある。そういった基本プレーを確実に身に着けてもらう指導をしています」
「競技人口が少なくなってきて、その中でつないでいかなければならないと思います。弟のように日本を引っ張っていけるような選手を少しでも輩出できたらいいと思います」
■受け継がれる江別市のバレーボール文化
一方、すでに指導者を引退した忠文さん。今でも江別の潜在力に大きな期待を寄せている。
「いま、私が指導した子どもたちの多くが江別で子育てをしているんです。みんなバレーをやってくれると思う。そういう子たちが増えてきたら、江別にとっては良い時代が来るんじゃないですかね」
脈々と続く「江別バレー王国」。近い将来、日本代表で活躍する選手が、また出てくるかもしれない。