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教室で銃を構える子どもたち―「実射訓練」「欧米のSNSはフェイク」 “ロシアの学びや”で広まるプロパガンダ教育のいま

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母親が語る価値観「男らしくなるために必要」ソ連時代に同じ教育で拒否反応なし

ロシア政府系機関の世論調査

ロシア政府系機関の世論調査

 学校での軍事訓練は旧ソ連時代にもあった。「1939年から初等訓練(5~7年生)と徴兵前訓練(8~10年生)を導入。男子は射撃や戦術、女子は救急を学んだ」(ロシアメディア)。ソ連崩壊が近づいた1990年に廃止された。

 訓練復活をどうとらえているのか。40代の母親2人に聞いた。「ソ連時代に私たちも学んだ」と口をそろえた。

 1人は「銃の扱い方は知っておいた方がいい」と賛成し、もう1人も「男らしくなるために必要だ。家族を守る方法の一つだから」と同調した。2人とも息子が2人いて、ルーツはウクライナ。それでも自身の経験から軍事訓練の復活に抵抗感はない。

 ロシア政府系の世論調査(2023年8月)でも78%が学校での軍事訓練復活に賛成だ。政権の影響下にある調査のため、一概に判断はできないが、抵抗感のない国民が一定数いることが透けてみえる。

 ロシアの愛国主義政策に詳しい東大先端科学技術研究センターの西山美久特任助教は「祖国防衛という国民の琴線に触れる文言でオブラートに包み、拒否反応が出ないようにしている」とプーチン政権のしたたかさを指摘した。

欧米批判の新授業スタート アメリカ発SNSは“フェイクまん延”と指導

新授業で使われたスライドの一部。欧米が開発したSNSの情報は“ロシアを陥れるフェイク”と伝える

新授業で使われたスライドの一部。欧米が開発したSNSの情報は“ロシアを陥れるフェイク”と伝える

 「毎週月曜日の1時間目に新しい授業が増えた。第2次世界大戦やウクライナ戦争、ロシアの祝日の意味を教わっている」

 モスクワの学校に通う10年生の男子生徒が取材に応じた。侵攻直後の2022年3月に始まった授業は、その名も「大切な話」。1コマ45分のうち、前半はその日のテーマに沿った動画を見て、後半は教員が生徒に語りかける。

 国営メディアも授業を詳報する。2022年3月、モスクワ郊外の学校では「歴史の真実」と書かれたスライドが映し出された。

 教員はウクライナ東部の幼稚園の被害例を紹介。アメリカのSNSや動画投稿サイトを見せながら、「ロシアがウクライナのせいにしたと拡散されている。偽データを事実とし、市民を誤解させている」とアメリカ側がフェイクニュースに満ちているとまとめた。

 「欧米の情報には、ロシアを陥れるフェイクがまん延しているとのイメージを植え付けている。軍事侵攻を正当化するプーチン大統領の言い回しを凝縮して伝え、外からの情報に惑わされないようにしている」(西山特任助教)

 生徒の受け止めは様々だ。モスクワに住む女子生徒(16)は「先生は授業でウクライナをナチスと言い、それを私たちに強要した。なぜ学校で戦争の話をし、私たちとウクライナを敵対させなければならないのか」と疑問を抱き、この授業だけ休みがちになったという。


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