大人になって終わりじゃない…虐待サバイバー"後遺症"の現実と治療の現場を取材 不調の理由を探ると子ども期の過酷な体験が
「妹が殴られたんですよ、妹の顔から血が出て私が注意したんですよね。そうすると妹のこともさらに殴るし、私の首も締めるし、髪を引っ張って、廊下を引きずって階段から落とされる。13段くらいありますよね、階段って」(梢恵さん)
さらに苦しめたのは思春期の頃に始まった性的な被害でした。
「浴室のドアを開けてくるとか…。私が明らかに入っているのは分かっているはず。それ以上のことは絶対に母には言えなかった。すごく気持ち悪いし、不快だし、おぞましいし。その人のことを汚いと思っていたから、自分も汚いんだな、最悪だなみたいな」(梢恵さん)
状況がさらに悪くなることが心配で、学校の先生に相談することはできませんでした。
「大人に言ったところで自分の良いように働いたことがないから、話が大きくなって学校でいじめられるか、男性にもっと何かされるか、母がバランスを崩して入院するか」(梢恵さん)
20歳のときに妊娠し、女の子を出産。
看護師の資格を取り、働きながら娘を育てました。
やりたいと言われた習い事はなんでもさせてあげるなど愛情を注いでいました。
しかし、娘が小学校に上がった頃から、自分の感情をコントロールできなくなる場面が増えていきました。
「娘を怒っているのか、娘をきっかけに自分の怒りを出しているのかも分からないくらい、衝動的な怒り。娘がピアノをうまく練習できないときに楽譜をびりびりに破ってしまうなど、ものすごい怒って娘を叩く。私が(男性に)されてきたのにね」
さらに、4年前からは身体にも異変が現れるようになります。
食欲がなくなり、眠れなくなりました。体重は2か月で10キロ減りました。
「このとき、ご飯が食べられなくて、いつも寒かったんですよね。内臓が悪いんじゃないかと消化器外科に行って胃カメラや大腸カメラをやってもどこも悪くないし、急に痩せるから、バセドウ病じゃないかと調べたけど、違ってなんだろうねみたいな」(梢恵さん)
原因が分からないまま病院を転々とし、辿りついた精神科で子ども時代の経験を話します。
すると…幼い頃の虐待などが原因で、感情の制御や対人関係がうまくいかずに社会生活に支障が出る「複雑性PTSD」のほか、気分の浮き沈みが激しい「双極性障害」と診断されました。
このとき初めて、虐待の影響があることを知りました。
「すぐキレるというのも症状の一つなんだよと言われました。悩みすぎ、気にしすぎとかいっぱい言われてきたけど、その理由が今までのどこかにあったんだということを認めてくれる人がいた。私のつらさが分かってくれる大人がいた、そのことだけで楽になれた。全部は無理だけどね」(梢恵さん)
現在は、薬とカウンセリングで治療を続けています。
これまで見ることができなかったものがあります。
両親が残していた子どもの頃のアルバムです。