「ご近所さんはいなくなった」富良野市で増える外国人…トラブルもあとを絶たず“オーバーツーリズム”におびえる住民
トラブルはごみにとどまらない。なだらかな丘にぽつんとたたずむ木など、市内にはフォトジェニックな景色がいくつもある。大半が農地などの私有地。外国人の無断侵入があとを絶たず、富良野市にはクレームが寄せられる。
「畑であれば、靴底から病害虫や病原菌が持ち込まれると、作物を作れなくなる。地主たちは観光スポットになることを望んでいない。映える景色と思われるのが怖い」(富良野市商工観光課)
訪日客の山岳遭難続く 「軽装で入山」と憤る警察
スキー場の管理区域外を滑るバックカントリー。外国人の遭難が止まらない。昨シーズン3件だったが、今シーズンは1月末現在すでに9件。半数以上は外国人だ。
アメリカ人の男性医師(72)が遭難したケースでは、1月16日朝、北海道警のヘリコプターが派遣された。上空から目視で発見し、山岳救助隊員がワイヤーで降下。地吹雪で見通しが悪い中、身動きがとれなくなった男性をピックアップし救助した。
バックカントリーのスキーヤーで、通報から15時間後の救出劇。地上からも約10人が出動していた。
これが民間の捜索だった場合、相場はヘリがフライト1分あたり1万円。陸上からの捜索は1人1日あたり5万円。今回のケースで計算すると、費用は約200万円となる。だが、道警の捜索は無償。ヘリの燃料代も税金で賄われている。
「遭難者のほとんどはスキー場でスキーするくらいの軽装。食料も持って行ってない。バックカントリーのプロから言わせれば冬山をなめている」。北海道警察の幹部はいら立ちを隠し切れない。
若者は市外に転出 好景気の影で人手不足が深刻化
好景気の影で人手不足も顕在化してきた。サービス業の有効求人倍率は3.15。ハローワーク富良野によると、介護業や宿泊業が深刻だ。人が足りず、稼働できない宿泊施設もある。コロナ禍に雇用調整した施設で、スタッフを集められないのだという。
「労働市場が人口で収まるサイズだったが、インバウンドの流入で仕事が増えた。パイの奪い合い」(業天崇裕所長)
周辺町村と合わせて高校生407人に進路を調査したところ、71%が他の地域に転出することがわかった。富良野市内に大学や短大はない。進学した地域で就職し、戻ってこない。
「高校を卒業後に富良野にとどまる学生が少ないことはそうだろうなとは思っていたが、数字で見ると悲しかった。ハローワークに求人を出さない企業も多いので、人手不足は求人倍率よりもっと深刻」(富良野市商工観光課)
高校生向けに年に2回、50社ほど集めた企業説明会を開催している富良野市。この結果を受け、対面での説明にとどまらず、企業の仕事を体験できる形式に内容を変更する方針。若い人たちに富良野や企業の魅力を伝えて印象付けたい考えだ。