児童虐待を生き延びた「虐待サバイバー」 周囲からトラウマ理解されず"孤立"も 動き出した支援「困りごと」に応じて支援へ
このクリニックでトラウマからの回復を目指して、取り組んでいる心理療法があります。
1本のひもを人生に見立て、これまでの人生を振り返ります。
ポジティブな記憶には花を、ネガティブな記憶には石を置いていきます。
治療を受けているのは父親からの虐待を受けて育った30代の女性です。
10代からパニックの症状や対人関係に悩まされてきました。
「この石は?」(南平岸内科クリニック 荒川和歌子 公認心理師)
「過激な暴言や暴力が増えた。左右から何発も殴られて、私はしゃがみこんで殴られ続けたりとか。包丁を振りかざしたまま、家の中を追いかけてきて。いつか自分は殺されるのかなとか」(患者)
振り返るなかで、自分の人生にトラウマがどのような影響を与えているのか理解できると同時に、記憶に向き合うことで少しずつ恐怖感も減っていきます。
「自分だけではまとめられてなかった(人生の)歴史を視覚的にみて、客観視できることが自分の中ではよかったなと思います」(患者)
「人生史全体を扱うことで、それぞれのトラウマがどういうふうに関連しているのかとか。あるいは今の症状にトラウマがどのように関わって影響しているのかっていうのを、人生史全体を整理していくことで見えてくるっていう面もあると思います」(南平岸内科クリニック 荒川和歌子 公認心理師)
女性はこれまで自分を責める気持ちをもって生きてきましたが、治療によって変化が生まれたといいます。
「関わる人も変わって、楽しいことが増えて嫌なことは嫌と言えるようになった。楽しいことしか、今はないです」(患者)
大学生のゆうさん。
家族を頼ることができないため、毎日、アルバイトをして生活費を稼ぎます。
トラウマの治療を勧められたこともありましたが、費用が高く、受けることができていません。
いま頼りにしているのが、虐待被害者を支援する団体です。
苦しい気持ちを打ち明けると、寄り添うメッセージが返ってきます。
ゆうさんを支える支援団体Onaraの代表・丘咲つぐみさんです。
丘咲さんも両親から過酷な虐待を受けて育ちました。
ゆうさんの生きづらさも理解してくれます。
「つぐみさんは今まで自分がやってきたことや思ってきたことを受け止めてくれるから、ちょっと楽になるというか、認めてくれる人がいるんだという、人を信じてみようかなと思えるきっかけをいつもくれます」(ゆうさん)